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2016年12月に行われた『FIFAクラブワールドカップジャパン2106』準決勝・鹿島アントラーズvsアトレティコ・ナシオナル戦で開催国の鹿島アントラーズが南米王者のアトレティコ・ナシオナルを3-0のスコアで勝利する快挙を成し遂げました。

その快挙に繋がったとされるのが30分に突然プレーが止まり場内のビジョンに「ビデオ判定中」と表示がされるなか、問題とされるシーンをタッチライン横にあるモニターでリプレーを確認した主審がプレーが切れる前、鹿島のFKからDF西大伍がPA内でファウルを受けて倒されたとして鹿島にPKを与えた場面こそFIFA主催大会で初導入となった「ビデオ判定技術」が使用された歴史的な場面でした。

この「ビデオ判定技術」の以前には、ゴールを判定する「ゴールライン・テクノロジー」の導入など近年のサッカーでIT技術は「不可欠な存在」になっており、それは「試合」だけに留まらずに「選手」へも及ぼしています。こうしたサッカーで使用されるIT技術の現状と将来的に「想定される可能性」について取り上げていきます。

 

■多くのサッカークラブが採用する「選手管理IT機器」

クラブやコーチにとって選手の「プレーの質」に関するコンディションをより正確に把握することは重要であり、それを可能とするIT機器がオーストラリアを拠点とするカタパルト社が開発した『GPSトラッキングシステム』です。

 

 

このGPSトラッキングシステムはスポーツブラジャーのようなウェアを選手に装着させて背中の部分にある小さなポケットにデバイスを入れ、ロシア製の衛星から発信されるGPSで位置情報を把握し、デバイスに搭載される『加速度計』・『ジャイロスコープ』・『磁力計(コンパス)』が内蔵される3つのセンサーによって様々なデータが内部メモリーに記録することが可能となり、それによりトラッキングカメラなどでは不可能なデータを得られるIT機器です。

2015年7月に等々力陸上競技場で行われた川崎フロンターレvsボルシア・ドルトムンドの親善試合で香川をはじめとするドルトムンドの選手らがスポーツブラジャーを身につけていたことをキッカケにカタパルト社のGPSトラッキングシステムが日本でも注目されるようになりました。またドルトムンドの他にもACミランやレアル・マドリー、チェルシーなどの欧州名門クラブもGPSトラッキングシステムを採用しているのです。

 

そして、このGPSトラッキングシステムを最も活用したことによって大きな成果を上げたクラブが2015-16シーズンのプレミアリーグで初優勝を成し遂げたレスター・シティだとされています。レスターは2015-16シーズンのプレミアリーグで最も負傷者が少なかったチームでもあり、それはシーズンを通じ主力の長期離脱などによる戦力ダウンが無かったことによってリーグ初優勝という結果をもたらしました。

レスターの負傷者が少なかった理由がGPSトラッキングシステムによるもので集めたデータからの数値を元に選手個々の疲労度を測ることによって負傷の要因を探ったり予防したりすることを可能にしたのです。それによって事前に「怪我の回避」と「負傷の予防」という情報を把握することが出来る観点としてもGPSトラッキングシステムは有効になるのです。

 

このGPSトラッキングシステムを採用するのは欧州クラブだけに留まらず、2017年2月現在でJリーグクラブでは柏レイソル、コンサドーレ札幌、横浜FCなどが2016シーズンから導入を開始し、2017シーズンからは湘南ベルマーレ、京都サンガFC、清水エスパルスもカタパルト社との提携を正式決定したことでもデータ収集を用いた選手のコンディション管理はJリーグクラブでも定着してきたと言えるでしょう。

 

■低コストIT機器によるシェア拡大

そしてサッカーで使用されるIT技術はプロサッカークラブよりも数多く存在するアマチュアそして育成年代のサッカークラブにも浸透し始めています。

その代表格とされ、さらなる普及が期待されるのがサッカー解析サービス機器『イーグルアイ』です。イーグルアイは屋外でのチーム練習、紅白戦、練習試合などでプレーする選手の二の腕に装着して装着中の選手の動きをデータとして記録し、その記録されたデータ情報がスマートフォンやタブレットにダウンロードした『イーグルアイ専用アプリ』に自動アップロードされ、使用後すぐにデータが確認出来る仕組みになっています。

 

 

イーグルアイの魅力は細かいデータを収集していくことに加えて通常版が17,500円という低価格という点です。これはGPSトラッキングシステムのような高額機器と比較した場合、はるかに低コストであり予算の少ないアマチュア・育成年代のサッカークラブにとっては魅力的なIT機器といえます。

 

また特定のサッカーコーチからの指導を希望する場合、そのコーチの都合が付かないなどの理由で実現出来ない問題を解決に導くIT機器も登場しており、それがスポーツ現場向けにコンディショニング維持やトレーニング成果を把握するためのデータベース開発を提供する『クライム・ファクトリー社』が開発した『CLIMB DB』です。

 

http://www.climbfactory.com/climbdb/

 

CLIMB DB最大の特徴は、選手のフィジカル・メディカル・コンディションに関するあらゆる情報をインターネット上で集約して一括管理することを可能にしたクラウドサービスで、CLIMB DBによってデータやノウハウを蓄積して遠方からでもチーム内のコミュニケーションを円滑にし、データを元にした日々の指導やトレーニングメニューの作成に活用出来ることに加え、初期費用30,000円で予算規模に併せた低額プランもあることでコストを抑えることが可能となり、こちらもイーグルアイと同様の魅力を持つIT機器と言えるでしょう。

 

■サッカーIT技術の更なる浸透

以上のようにトップクラブをはじめアマチュアクラブ・育成年代のクラブ・スクールが選手の能力値やコンディションをIT機器で管理して日々のトレーニングに活かすことは、冒頭の試合運営時と同様に選手のコンディション管理でもIT技術は「不可欠な存在」になっているといえます。

特にイーグルアイは、製品・サービスの開発またはアイデアの実現など「ある目的」のためにインターネットを通じて不特定多数の人から資金の出資や協力を募る『クラウドファンディング』によって開発を軌道に乗せたことでも、ある意味ではサッカーによるIT機器事業に参入する機会は「誰にでも」あるといえるでしょう。

これから先もサッカーに使用されていくIT機器の開発および市場導入はさらに振興していくことが予想され、こうした一連の動きを仮に「サッカーIT産業」と呼ばせていただくが、これから先もサッカーIT産業はさらなる進化を遂げながら「サッカー市場」に浸透していくと予想されます。

 

そして、このサッカーIT産業による波及効果はサッカークラブやスクールだけではなく、「サッカー観戦者」の観戦環境にも変化をもたらしています。次回はサッカー観戦者をターゲットするサッカーIT産業の現状や展望について触れていきます。

 

※参考記事・『Number Web』、『アズリーナ』、『COACH UNITED』

 

 

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