このほどアメリカのメディア『ブルムバーグ』が世界最大級の利用者数であるネット通販サービスを展開する『Amazon』がスポーツ配信に興味を抱いていると報じました。
報道によるとサッカーをはじめテニス、ゴルフ、オートレースといったスポーツを対象にし、将来的にはバスケットボールや野球といったアメリカを代表するスポーツの配信も視野にしているとしており、Amazonは近年の映像コンテンツにも参入に乗じて幅広いスポーツを扱うライブ放映権の獲得にも乗り出しているとしています。
日本でも今夏からソフトバンクとヤフーが共同で運営する『スポナビライブ』が配信を開始しリーガエスパニョーラなどのサッカー中継を行うようになり、そしてJリーグと10年間で2100億円の放映権契約を締結したイギリスに本社を置くPerform Groupが提供する『DAZN(以下ダ・ゾーン)』がJリーグや海外サッカー(セリエA・ブンデスリーガ)のライブストリーミングサービスを開始しています。
今回のレポートでは本格的にJリーグ中継に参入するダ・ゾーンの日本参入の狙いとネット配信によって多様化してきたサッカー中継によって観戦する側に与える影響などについて取り上げていきます。
■契約締結に合わせた設備投資
Jリーグとの放映権契約が発表された2016年7月にダ・ゾーンは制作ブース2部屋とオーディオブース10部屋の12スタジオブースを備えた新オフィスを東京都・大門に開設しました。
オフィスは、ミーティングスペースに原寸大のサッカーゴールや休憩スペースにフーズボールとスポーツ配信を手掛けるレイアウトとなっており、制作ブースではグローバルしたコンテンツを日本のスポーツファン向けに編集する映像制作を行い、オーディオブースでは制作された映像にスポーツの初心者から精通するファンまでに対応することで海外スポーツに日本語解説をつけるなど24時間体制で運営されます。
現時点でダ・ゾーンは、すでにJリーグ配信を開始していますが事実上は来シーズンからのJリーグ中継に向けた設備投資といえるでしょう。
■サッカー中継にネット視聴を浸透させる
今回の日本進出についてダ・ゾーンのマーケティングディレクターを務めるピーター・リー氏がサッカー専門誌『フットボリスタ』のインタビューで以下のように述べました。
http://www.footballista.jp/special/32065/2
「まずはタイミングですね。現状の日本では複数のスポーツを見ようとしてパッケージを組み合わせていくと8000円以上かかります。ファンがお手頃な価格で見られるサービスがなかったため、今このタイミングで日本でサービスを開始すべきと考えました。さらに、今の日本はテレビが主なので、限られたデバイスでしか見られないものをマルチデバイスで提供することによって、日本の視聴習慣に合わせたものにできる。日本の場合、通勤時間が長いので通勤中に見たり、寝る前にベッドの上でタブレットで見たりなどのニーズがありますよね。ぜひそれを我われが提供したい。『黒船』というのはポジティブとネガティブの両方の意味があるかと思いますが、あくまで便利かつリーズナブルなものを日本国内で展開したいというのが理由です」
他にもリー氏は地上波テレビ局へのJリーグ中継の提供に関しては現状では何も決まってはいないがビジネスとしては可能性はあるとしながらも、あくまで日本のサッカー中継に「ネット視聴という習慣」を根付かせたいことが目的だということが伺えます。
■ネット視聴がサッカー中継の選択肢を狭める?
昨今のネット環境のインフラ整備化と併せてスマートフォンやタブレットの普及によりサッカーをはじめとするスポーツ視聴方法の多様化が急速に広がったといえるでしょう。
しかしながらスポーツ視聴方法の多様化が広がったとはいえダ・ゾーンのようにネット視聴をメインにしてサッカー中継が展開された場合、従来のテレビ視聴を「どうするのか?」という問題がとりざされる可能性があります。サッカー中継を「これまでのようにテレビ画面で観戦したい」という視聴者にとっては懸念されるところです。
ダ・ゾーンもビジネス展開によっては地上波テレビ局への提供もありえるとしていますが、サッカー中継の視聴者に対して選択肢を広げるのではなく選択肢を狭めることに繋がる可能性があることでもJリーグは「今後の課題」にならないようにすることが求められます。
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