昨今、各企業やメーカーが自社の製品およびサービスなどの情報を顧客に向けて発信するために『ツイッター』や『Facebook』といったソーシャルネットワーキングサービス(以下・SNS)を利用することはすでに必須となっており、それはサッカークラブの運営でも同じことがいえます。
最近ではJリーグの各クラブもツイッターやFacebookをメインとするSNSを積極的に活用するようになってきましたが、これまでのクラブや選手の情報発信するための「ツール」から「クラブの個性」を押し出しすクラブが出てきました。そこでサッカークラブによるSNS活用が新たなステージに突入したことを示す事例となるケースを前・後編に渡って取り上げます。
■日本のプロスポーツ界初のイベント
2016年4月10日に『日産スタジアム』で行われた横浜Fマリノスvs浦和レッズ戦の会場で横浜Fマリノスは、写真共有SNS『インスタグラム』を使った「#エンプティ(empty)プロジェクト」とするイベントを行いました。
これは『インスタグラマー』と呼ばれるインスタグラムの投稿者に試合前での観客のいないスタジアムやロッカールームを撮影して投稿してもらう取り組みで日本のプロスポーツ界では初めて行われたイベントです。
投稿された写真にはサポーターなどから多くの「いいね!」が寄せられ、サッカークラブとは無縁の「写真家」に「スタジアム」という素材を提供することで様々なインスタグラマーに対するPRへ繋げることになりました。またイベントには試合に合わせてインスタグラム共同創業者でCEOのケビン・シストロム氏が初来日したのです。
■写真・動画によるファンへのアピール
試合観戦に訪れたシストロム氏は、イベントについて「インスタグラムは、選手・チーム・ファンそれぞれが写真や動画を通して繋がることができる場を提供している。たとえば多くのスポーツ選手がインスタグラム上で練習や試合後などの舞台裏をシェアし、ファンと活発に交流している。ビジュアルは言語の壁を超えてコミュニケーションを図ることができるツールであり世界の共通言語」とインスタグラムならではのことだと述べました。
一方の横浜Fマリノスは、ターゲットを既存のファンとまだ横浜Fマリノスを知らない人の両方だとし「サポーター向けにこれまでは良い写真を提供する機会がなかったがインスタグラムは写真に特化している点が利点であり良い写真を提供できるようになり、マリノスを知らない人には写真のイメージやタグ付けした言葉から我々のことを知ってもらいたい」と期待を寄せます。
■視覚効果によるPRと集客の可能性
すでに欧州クラブでは、インスタグラムのアカウントを取得してフォロワーを増やすなどして積極的に活用していることに対し、Jリーグクラブでインスタグラムのアカウントを取得しているのは今回の横浜Fマリノスをはじめ浦和レッズ・川崎フロンターレ・FC東京など4クラブのみとJリーグでは浸透されているとは言えない状況です。
ツイッターやFacebookと比べて、まだ日本では浸透されていないインスタグラムをシストロム氏は横浜Fマリノスのイベントを皮切りにJリーグをはじめ日本の各スポーツチームや団体に向けてインスタグラムの活用術となるモデルケースとするPR目的だったと見られます。
ビジネス上では視覚効果を狙ったマーケティングが重要視されていることでも顧客となるファンやサポーターに視覚で伝えるインスタグラムはJリーグクラブにとって有効なツールになるでしょう。
これはプロサッカークラブだけに限ったことではなく、育成年代のサッカークラブやサッカースクールもインスタグラムのアカウントを取得することでPRと集客に繋がる可能性を秘めているはずです。