イタリア・セリエA | サッカービジネス レポートファイル - Part 2のブログ記事

フットボール・マネーリーグ2015(2013-14シーズン)の検証4回目は20クラブのうち4クラブがランクインしたイタリア・セリエAです。

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■放映権料が主な収入源になりつつあるセリエA

※[]内は前年の順位および収入額、 レートは2015年・2月時点の1€=約135円で換算。内訳はチケット収入・テレビ放映権料・スポンサー料(広告など)の3部門。

10位ユヴェントス 377億円 [9位/381億円] チケット収入56億円、放映権料207億円、スポンサー料114億円

12位ACミラン 337億円 [10位/368億円] チケット収入35億円、放映権料165億円、スポンサー料137億円

16位ナポリ 222億円 [ランク外/参考・163億円] チケット収入27億円、放映権料145億円、スポンサー料50億円

17位インテル・ミラノ 221億円 [15位/236億円] チケット収入26億円、放映権料114億円、スポンサー料81億円

 

■伸び悩んだユヴェントスと収入でも低迷するミラノ2クラブ

前回9位から10位にランクダウンしたユヴェントスはリーグ連続優勝を果たしましたが、チャンピオンズリーグではグループステージで敗退し、その後のヨーロッパリーグはベスト4に進出するもスポンサー料の増額以外には全体的に伸び悩んだことがランクダウンの要因と見られます。

そして前回よりさらにランクダウンとなったミランですが、チケット・スポンサー料はあまり変動はありませんが過去のミランに於いても主たる収入源である放映権料が減収となった影響は大きく、このシーズンでのチャンピオンズリーグ敗退以上に出場権を逃したリーグ戦の不振を示したと言えます。また、次回の『フットボール・マネーリーグ2016』である2014-15シーズンの低迷によっては更なるランクダウンになることが予想されます。

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ミランと同様に不振を極めたことでランクダウンとなったインテルに関してはチケット・放映権料は、ほぼ横ばいとなりましたがスポンサー料が減収になったことで更なるランクダウンとなりました。

そして、このシーズンでは長年に渡り会長を務めたマッシモ・モラッティ氏が名誉会長に就任して会長職を退き、新たに筆頭株主となったインドネシアの実業家エリック・トヒル氏が会長に就任した節目のシーズンでもありました。

 

■収入でも躍進したシーズンになったナポリ

前回ランク外から一気に16位にランクインしたナポリは、リーグ戦を3位で終えた躍進ぶりが放映権料増にも繋がってランクインしたと思われます。

一方で2014-15シーズンは、リーグ戦は5位で終えましたがヨーロッパリーグではベスト4進出を果たしたことで次回のランキングの順位に注目です。

 

次回、検証シリーズの最後はスペイン・リーガ・エスパニョーラです。

 

 

このほど、セリエAのACミランが2014年5月にオープンしたクラブオフィスとグッズショップ・ミュージアムなどを備えた総合施設『カーザ・ミラン』の正面にある旧見本市会場地を買収しミラン専用の新スタジアム建設の構想を練っているとイタリア・メディアが報じました。

 

■スポンサーと共同出資となる新スタジアム

新スタジアム構想を打ち出したのはバルバラ・ベルルスコーニCEОの発案だとされており、現在のホームスタジアムの『サン・シーロ』よりも市街地に近く交通の便の良さとカーザ・ミランの正面に備えることによる相乗効果を狙ったものだとしています。

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新スタジアム建設のプロジェクトはカーザ・ミランの建築家を務めた『ミラニスタ』でもあるファビオ・ノヴェンブレ氏も設計に携わり、2016年からの着工を目指すとしています。

その計画の具体案として2010年にユニフォーム胸スポンサー契約を締結したUAEの航空会社『エミレーツ航空』と12月1日に2020年まで合計約1億ユーロ(約146億円)のスポンサー契約の延長をバルバラCEОが発表したと同時にエミレーツ航空と共同出資で新スタジアム建設を進めることも示唆しました。

 

■経営面の話題が出るワケとは?

また、バルバラCEОはカーザ・ミランの収益発表も行い、発表時現在で20万人の来場者がカーザ・ミランを訪れ、その収益は200万ユーロ(約3億円)になったことも明らかにしました。

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これまでのミランでは聞かれることがなかった「経営面」の報道が聞かれるようになった理由が、先ごろに明るみとなった2014年シーズンの決算で7,000万ユーロ(約102億円)を計上した赤字でしょう。

こうした要因に挙げられるのが『ファイナンシャル・フェアプレー制度』の導入によりオーナーの自己資金のクラブ投資が認められなくなったことによって容易な補強が厳しくなったことやチャンピオンズリーグ出場権も失ったことで放映権収入や入場料収入などの収益を得られなくなったことです。

 

■グローバル路線を拡大するバルバラCEО

損失を補うためバルバラCEОは中東およびアジア地域企業とのスポンサーまたはパートナーシップ契約の拡大に力を入れており、ミランは日本企業とも富士通とトーヨータイヤとスポンサー契約を結んでいますが10月には日本のコンビニエンスストア『ローソン』との交渉も報じられました。

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報道によるとローソンとの交渉では、カーザ・ミランを東京に建設する計画が進んでいることを伝えたとしており、カーザ・ミランの東京建設が実現した場合にローソンに対してテナント優先権などの条件を提示した可能性もあります。

 

かつてセリエAおよびチャンピオンズリーグに君臨してきたミランからは程遠いチーム状況ではありますが、しかしミランは世界各国に熱烈なファンを持つ「名門クラブ」のブランドを持つクラブでもあります。

そのブランドを最大限に活かしたブランディング活動をバルバラCEОは実行しているのでしょう。

 

 

10月24日に『ユヴェントス』は株主総会を開催し、そこで3億1,580万ユーロ(約475億9,100万円)というクラブとして記録的な売上高だったことを発表しました。

 

■セリエA3連覇と売上げ増は堅実かつ新たな試みによって達成

それによるとユヴェントスは、昨シーズンにセリエA3連覇を達成したことやイタリアで数少ないクラブ運営のスタジアムを所有したことで非常に高い集客率を上げて収入面にも大きなアドバンテージとなったことが売上げ増に繋がったとしています。

株主総会でユヴェントスのアンドレア・アニェッリ会長は以下のように述べました。

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「歴史上で1度だけ経験していたものを、我々は再び成し遂げた。5月に我々は3連覇を達成した。それは80年前に1930年代以来のものだ。ユヴェントスはイタリアサッカー界での記録を作った。

スポーツ面で言えば、勝利する能力があると証明されているアッレグリ監督のそばにパヴェル・ネドヴェド、ファビオ・パラティーチがおり、健全な基礎を持っている。さらに新しい挑戦に向かう準備が出来ており4連覇を勝ち取るために動いている選手たちを備えている。

ユヴェントスに関わる皆の働きは、今日の売上高に導いてくれた。テレビ放映権、そして試合ごとの収入などを総合し、我々の営業収入は2億8050万ユーロ(約406億6,725万円)となった。

選手の肖像権での収入を含んだ場合、それは歴史上初めて3億ユーロを超える。正確には3億1,580万ユーロだ。ほとんどの者が信じなかったものが可能だった」

 

■保有選手の育成を目的にしたクラブ買収

株主総会が開催される前にユヴェントスがポルトガル1部リーグ(プリメイラ・リーガ)の『ベレネンセス』の買収に動いていることが明るみに出ました。

これを報じたイタリア紙『トゥット・スポルト』によるとリスボンをホームタウンにするベレネンセスの株式の51%保有のために動いており将来的には100%保有を目指しているとされ、別のクラブを所有することで保有する選手を適した環境で育成できるなどのメリットが得られるとしています。

こうして順調な売上げ高を記録したユヴェントスですが、一方でアニェッリ会長は「イタリアサッカーの状況を見ると欧州全体から衰退していることを認識するべきだ。」と イタリアサッカーの将来を見据えた場合の現状を危惧していることも述べています。

 

■イタリアサッカーの将来のために挑む「新たな名門クラブ像」

アニェッリ会長のコメントを読み解いていくと、まず2011年に開場した『ユヴェントス・スタジアム』はクラブが所有するサッカー専用スタジアムとして注目を集めることになり、これまでイタリアでクラブ所有のスタジアムが存在していなかったことでイタリアサッカーにとっては大きな転機となったことは間違いありません。

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また、3連覇を成し遂げたシーズンを振りかえても高額な移籍金を支払うような補強を行わずに結果を残したことや保有選手の育成目的のベレネンセス買収などの動きを見ていると「新たな名門クラブ像」を構築しようとしているのでは?と読み取れます。

これれまでに欧州サッカーで行われてきた高額移籍金の選手獲得の乱立も『ファイナンシャル・フェアプレー』が制定された現在では不用意な支出も出来なくなった今こそ「ユヴェントスの新たな名門クラブ像」がイタリアサッカーの将来を左右していると言っても過言ではないでしょう。

 

 

 

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